『持続化給付金』は、新型コロナで売上が下がった個人事業主にとって心強い制度です。
しかし、業種によっては給付対象にならないケースがあります。
そこで対象になる業種や対象外になる業種の事業者が使える支援制度を解説します。
ちなみに先に結論をお伝えすると以下の通りです。
- 性風俗系・宗教系の業種の事業者は持続化給付金の対象外
- 性風俗系でも店の委託で働くキャストなどは対象となる(オーナーなどが対象外)
- 上記以外の業種は持続化給付金の対象(俳優やWebライターなどもOK)
- 対象業種でも給付条件に該当しない個人事業主は給付を得られない
- 対象外業種の個人事業主は雇用調整助成金などの違う支援制度がある
それぞれ上記のポイントについて詳しく解説していきましょう。
そもそも個人事業主も得られる持続化給付金とは?
「持続化給付金」は、新型コロナウイルス感染症拡大で影響を受ける事業主の支援制度の一つ。
事業の継続を支え、再起の糧になるのを目的としています。
2020年5月1日より申請の受付が開始されて、個人事業主の方から注目を集めています。
ここでは、支給額の算出方法を理解し、申請の流れを把握しておきましょう。
持続化給付金の計算方法
持続化給付金の給付額は前年の売上高に基づいて算出され支給上限は以下の通りです。
- 中小法人など:200万円
- フリーランスを含む個人事業主:100万円
2019年と2020年の売上を比較し、下記の計算方法で売上減少額を算出。
例えば以下の場合、4月は4月は前年同月比で売上が50%以上減少していることが分かります。
2019年の総売上 | 2019年4月の売上 | 2020年4月の売上 | 減少率 |
600万円 | 50万円 | 20万円 | 60% |
前年同月比▲50%の売上×12ヶ月のため、上記に当てはめると20万円×12=240万円となります。
次に上記の数字に前年の総売上を引くので、600万円ー240万円=360万円という金額が出ました。
上記が売上減少額ですが、個人事業主の給付額は100万円が上限です。
そのため、100万円が支給される流れです。
- 基準となる売上月は任意で選択可能。50%以上売上が減少した月がひと月でも発生したら持続化給付金が申請できます。
- 支給された給付金の使い方に制限はなく、個々の状況に応じて事業継続の目的として使用可能です。
申請の流れ
持続化給付金のホームページからの電子申請が原則で、本人による申請のもと下記の流れで手続きが進みます。
- 持続化給付金のホームページにアクセス
- 申請ボタンを押し、メールアドレスを入力・仮登録を行う
- 入力したメールアドレスに、本登録用のメールが届く
- ID・パスワードの設定
- マイページで「基本情報」「売上額」「口座情報」の入力
- 必要書類を添付
- 申請
マイページの入力画面では、下記の基本情報が必要です。
- 屋号、雅号
- 業種
- 申請者住所
- 生年月日
- 連絡先
申請時には、さらに下記の書類が必要となります。
- 2019年分の確定申告書第一表の控え
- 前年同月比で事業収入が50%以上減少した月の月間事業収入がわかるもの
- 申請者本人名義の振込先口座の通帳の写し
- 運転免許証、個人番号カード等の本人確認書類
青色申告者の場合、さらに「所得税青色申告決算書の控え」も必要です。
画像形式に注意
必要書類は細かい文字が読み取れるようスキャンが必要です。
なお、ファイル形式はPDF・JPG・PNGのいずれかにしなければなりません。
ただiPhone・iPad(iOS11 以降)で撮影した場合、ファイル形式が「HEIF」となります。
この場合、必要書類のデータを電子申請に添付できないので注意が必要です。
ホームページ上で申請をすると、持続化給付金事務所で内容が確認されます。
不明な点が見つかった場合は入力したメールアドレスへ連絡が入ります。
内容に不備がなければ、2週間程度で登録された銀行口座に入金。
すべての確認が終了すれば給付通知書が発送される、という流れです。
申請期間は令和2年5月1日〜令和3年1月15日まで。好きなタイミングで申請できます。
持続化給付金で対象となる個人事業主の業種
持続化給付金は、フリーランスを含む個人事業主も対象で、対象となる業種は以下の通りです。
- 農業
- 漁業
- 製造業
- 飲食業
- 小売業
- 作家
- 俳優業
他にも声優やフリーで活躍しているWebライター、プログラマーなど様々。
ここに挙げられていない業種=対象外業種というワケではありません。
幅広い業種が対象となる持続化給付金ですが、一方で対象外となる業種も存在します。
持続化給付金で対象とならない個人事業主の業種
経済産業省の規定に以下のような記載があります。こちらに該当する業種は対象外です。
風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律に規定する正風俗関連特殊営業、又は当該営業に係る接客業務受託営業を行う事業者
法人もしくは個人を問わず、警察に営業の届け出などをしていても給付の対象外です。
性風俗店の事業者には給付金が支給されない、という認識でほぼ間違いありません。
以降「性風俗関連特殊営業」と「接客業務受託営業」について、詳しく解説します。
対象外業種の「性風俗関連特殊営業」とは?
性風俗関連特殊営業とは、下記の5つの業態として定義されます。
- 店舗型性風俗特殊営業
- 無店舗型性風俗特殊営業
- 映像送信型性風俗特殊営業
- 店舗型電話異性紹介営業
- 無店舗型電話異性紹介営業
「店舗型・無店舗型性風俗特殊営業」とは
具体的には以下のような営業のことを指します。
- 個室において異性の客に性的好奇心に応じて接客する営業
- 宿泊施設において異性の客に接触するサービスを提供する営業
ソープランドやデリバリーヘルスなどが該当します。
「映像送信型風俗特殊営業」とは
性的好奇心をそそるための映像を見せる営業のことです。
アダルトサイトの運営といった事業を行っている業者は上記に当てはまるでしょう。
「店舗型・無店舗型電話異性紹介営業」とは
面識のない異性と性的好奇心を満たすための会話を提供する営業のこと。
例えばテレフォンクラブも性風俗関連特殊営業として定義されています。
対象外業種の「接客業務受託営業」とは?
接客業務受託営業は、風俗法の中で次のように定義されています。
「専ら、接待飲食等営業、店舗型性風俗特殊営業、特定遊興飲食店営業又は酒類提供飲食店営業を営むものから委託を受けて、これらの営業の営業所において客に接する業務の一部を行うことを内容とする営業」
接客業務受託営業の中で記されている「客に接する業務」とは、主に下記の行為のことです。
- 客の相手となってダンスする
- 客を客席等に案内する
- 飲食物を客席に運搬する
- 客の手荷物等を客から預かること
具体的には、コンパニオン派遣業・外国人芸能人招へい業・芸者置屋等が該当します。
ただ今回の持続化給付金で対象外となるのは、あくまで「事業者」の方です。
業務委託の形態で従事している性風俗系の従業員は、個人事業主ですので対象になります。
今後、対象になる可能性も
もともと給付対象外だったのが、政府の発表により給付対象となったケースもあります。
例えば、これまで2020年創業した事業者は持続化給付金の対象外でした。
が、5月22日、経産省は2020年1〜3月末までに創業した事業者も対象にしました。
また、事業収入を「雑所得」や「給与所得」として確定申告していた事業者も対象になりました。
さらに「風俗系の事業主も給付対象に」という声も挙がっている状態です。
そのため、今後支給が認められる可能性もゼロではありません。
対象外業種の個人事業主が活用できる代替制度
ここでは持続化給付金の対象外となった個人事業主が活用できる代替制度を解説します。
具体的には以下の制度が代替として利用することが可能です。
- 雇用調整助成金
- 家賃支援給付金
事業をなんとしても継続させたい方はぜひ利用を検討してください。
雇用調整助成金
雇用調整助成金は経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者向けの支援制度。
労働者に一時的に休業を行い、労働者の雇用の維持を図った際に休業手当などを助成します。
コロナ拡大により特例措置が取られ、支給対象となる事業者が下記のように拡大されました。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
- 最近1か月間の売上高または生産量などが、前年同月比5%以上減少している
- 労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っている
全業種の個人事業主が対象となり、例えば次に挙げる理由で休業した事業者が助成の対象です。
- 観光客の渡航自粛により、客数が減少した
- 従業員が新型コロナウイルスに感染し、自主的に閉店したため事業活動が縮小した
- 行政からの営業自粛要請を受け、自主的に休業を行い事業活動が縮小した
緊急対応期間中においては、風俗関連事業者も限定なく雇用調整助成金の対象者となります。
家賃支援給付金
「家賃支援給付金」も持続化給付金の対象外となった個人事業主が活用できる制度の一つです。
こちらは感染症防止対策で営業を自粛したことにより、売上が激減したテナント事業者への支援。
2020年5月28日に閣議決定された制度です。
6か月分の家賃支援金として、個人事業主に対して最大300万円が支給されます。
補正予算案によると、家賃支援給付金が給付される条件は以下の通り。
- 2020年5月から12月までの間のいずれか1か月間の売上高が、前年同月比で50%以上減少している
- 2020年5月から12月までの間のいずれか連続する3か月間の売上高が、前年同月比30%以上減少していること
給付額の上限は以下の通りです。
- 1店舗だけを経営する個人事業主だと月額25万円(総額150万円)
- 複数店舗を保有するなら月額50万円(総額300万円)となります。
給付額の支給率は家賃の額によって変動します。
支払い家賃の総額が37.5万円までの場合は2/3、112.5万円までの場合は1/3です。
上記の内容で申請受付が開始されるのは「6月下旬から7月にかけて」と予測されています。
実際に支給されるのは7月以降になると思われます。
持続化給付金の対象業種でも申請できない個人事業主もいる
持続化給付金の手続きを行う際は、対象業種に当てはまっていても申請できないケースもあります。
対象業種とは別に、給付条件があるからです。具体的には以下の通り。
- 2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業継続する意思がある
- 2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月があること
また下記のいずれかに該当する場合も、給付対象外となります。
- 入力事項・申請書類に虚偽の内容が含まれている
- その他、給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断する者
給付対象外となるケースについて、以降解説していきます。
事業収入が50%以上減少した月がない場合
事業収入が50%以上減少した月がない個人事業主は、対象業種であっても申請ができません。
例えば以下のケースは2020年の売上が減っているものの、減少率は50%以下の状態です。
そのため、持続化給付金の申請はできません。
2020年1月 | 2020年2月 | 2020年3月 | 2020年4月 | 2020年5月 |
40万円 | 30万円 | 40万円 | 30万円 | 20万円 |
2019年1月 | 2019年2月 | 2019年3月 | 2019年4月 | 2019年5月 |
50万円 | 40万円 | 60万円 | 50万円 | 30万円 |
事業を継続する意思がない場合
事業を今後継続する意思がない場合も、持続化給付金の対象外となります。
例えば、コロナウイルス感染症の拡大を期に廃業する個人事業主などは対象外です。
事業の継続を支えるという持続化給付金の趣旨にそぐわないので、支給されません。
宗教上の組織・団体の場合
さらに宗教上の組織や団体も、持続化給付金の対象外となります。
宗教団体などに公の財産の支出を禁じた憲法との兼ね合いがあるからです。
例えば、寺院や教会、神社といった宗教法人には支給されません。
中小の宗教法人は対象になる可能性
2020年5月14日に、中小の宗教法人を追加する方向で最終調整に入ったという報道がありました。
今後の動向によっては対象となる可能性があります。
まとめ
今回は、個人事業主を対象とした持続化給付金について解説しました。
コロナウイルス感染症対策による自粛要請などで、現在も資金繰りで苦しんでいます。
今回の記事で給付対象業種ということがわかった事業者はぜひ持続化給付金を活用しましょう。
対象外業種の事業者については「雇用調整助成金」などの支援制度があります。
こちらの制度を活用してみてください。
この記事が、事業の存続に向けた一歩の後押しになれば幸いです。
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